婚約破棄された悪役令嬢は、気ままな人生を謳歌する
 彼の向かいには、並び合うエリーゼとビクターが描かれていた。しかも、エリーゼはウエディングドレス姿である。

「アンジェリ―ナ様は、なぜこのようなものを……」

 そのとき、ララの背後からゆらりと影が差した。

 ハッとして振り返れば、ジャージ姿のアンジェリ―ナが、ララとビクターを『じっとり』と音が聞こえそうなほど睨んでいる。

「見~~た~~な~~」

「ぎゃあっ」

 ララは、飛び跳ねるようにして壁際に避難する。

「絶対に入らないで、って言ったじゃない」

「ごめんなさい! アンジェリ―ナ様が心配でつい! でも、入らなければよかったって後悔してます。いよいよ私、アンジェリ―ナ様の行動が理解できません!」

 ララが泣きそうになりつつ弁解する一方で、アンジェリ―ナの真正面に立っているビクターはだんまりを決め込んでいた。わなわなと唇を震わせている様子から考えるに、必死に怒りをこらえているようだ。

「……アンジェリ―ナ様。この絵は、いったい何のおつもりですか?」

 ビクターとエリーゼが並ぶ絵を指し示しながら、ビクターが低い声を出した。
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