婚約破棄された悪役令嬢は、気ままな人生を謳歌する
 全てが露見した今、腹をくくる覚悟ができたのだろう。アンジェリ―ナは大きくため息を吐いたあとで、開き直ったかのように明朗な声を出す。

「あなたとエリーゼのスチルです。そのスチルだけは、想像で描いたのです。こんなスチルがあったら良かったのにと妄想して」

 瞳から星が舞い散るかのごとく顔を輝かせ、アンジェリ―ナがその絵を見つめる。ララは激しく混乱した。

「すちる……? ていうか、これ全部アンジェリ―ナ様が描かれたのですか? たしかに、絵は子供の頃から画家並みに上手でしたけど」

「そうよ。可愛いエリーゼを愛でたくて」

「可愛い、エリーゼ……?」 

 ララは頬を赤くし、口元を手で覆う。

「もしかしてアンジェリ―ナ様。そっちの方だったのですか?」

「いいえ。『推し』なだけよ。女の子が同性を推すのと恋愛感情は、全く別物だわ」

 アンジェリ―ナは正々堂々と答え、満足そうにエリーゼの絵画をぐるりと見渡す。

 ララは頭を抱えた。

 婚約者を奪い取った仇の女を、憎むどころか愛でるなど、聞いたことがない。

「アンジェリ―ナ様」
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