婚約破棄された悪役令嬢は、気ままな人生を謳歌する
 それからのスチュアートは、極力アンジェリ―ナと関わらないようにしてきた。

 恋敵がこの国の王子で、かつ乳兄弟という不運もあったが、彼女を見るたびに無性に冷たくあしらいたくなってしまうのだ。

(冷たい自分を、彼女は気にかけてくれるかもしれない)

 そんな遠回しな妄執に、いつもビクターは駆られていた。

 傍にいられない、恋人になれない立場であるからこそ、どんな印象でもよいから彼女の頭の片隅いたかった。

 彼女の目に留まりたい一心で昼夜を問わず剣技に励み、剣の腕前もめきめきと上達していった。異例の若さで騎士団長に就任したのは、アンジェリ―ナと出会ってから二年後のことだ。

 だがアンジェリ―ナはと言えば、いつも淡々とした表情をしていた。どんなに素っ気ない態度をとったところで、目が合うことなど皆無に等しい。

 やがてビクターは気づく。

(俺は、アンジェリ―ナ様の視界にすら入っていない!)
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