婚約破棄された悪役令嬢は、気ままな人生を謳歌する
     ※
 ララとビクターに秘密の部屋を暴かれた日の朝。

 食堂にて、アンジェリ―ナがエリーゼの絵を自ら描いてコレクションした経緯を話せば、ララはようやくのことで理解してくれたようだった。

「つまり、アンジェリ―ナ様はエリーゼ様が前々から大好きだったと、こういうわけですね」

「そうよ。彼女、すごく可愛いでしょ? まるで花の妖精みたいだと思わない?」

「いえ。私には身のほど知らずの田舎少女といった印象しかございませんでしたが……つまりエリーゼ様の絵をコレクションしてこっそり愛でるほどお好きなアンジェリ―ナ様は、スチュアート様を奪われたことを恨んでなどいらっしゃらないということですね?」

「もちろんよ」とアンジェリ―ナはララの淹れてくれた紅茶に口をつける。

「でも、スチュアート様がエリーゼ様のお相手なのは、正直微妙なのよね。以前はスチュアート様でも構わなかったのだけれど、彼がポンコツなのを知ってから、エリーゼ様にはもったいないのではと思ったから。だから、ビクター様とエリーゼ様の絵を描いたの」

 “以前”とは言わずもがな、前世のことだ。

 ゲームをプレイしていた頃は、スチュアートの中身があれほどすっからかんだとは、思ってもみなかった。

「なるほど。……って納得している場合じゃないですけど。エリーゼ様とビクター様の絵をお描きになられた経緯は理解いたしました」

 ララは腰かけるアンジェリ―ナの向かいに立ったまま、複雑な表情で腕を組んでいる。

「つまり裏を返せば、アンジェリ―ナ様はビクター様を男性としてお認めになられているということですね?」
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