婚約破棄された悪役令嬢は、気ままな人生を謳歌する
「ええ。美形だし、性格も曲がったところがないし、少し天然かなと思うところはあるけど、魅力的な男性だと思うわ」

 言ったあとで、アンジェリ―ナはハッと口元を抑えた。

 あくまでも客観的な考察だったはずなのに、思いがけず、自分がビクターのことをどう考えているのかを知ったからだ。

「へえ~。なるほど」

 ララが、意味深な顔でこちらを見ている。

 と、そのとき、食堂の入口から慌てた様子でトーマスが入ってきた。

「アンジェリ―ナ様! 客人ですだ!」

「客人? この“悪魔の塔”に?」

 アンジェリ―ナとララは、腑に落ちない顔を見合わす。

「そうだす。なんだか知らねえけど、ものすごく強引な方で、アンジェリ―ナ様に会わせろとの一点張りで」

 トーマスがそう捲し立てる背後から、フードを被った男が姿を見せた。

「ああ、勝手に入ってはいけないですだ」

 トーマスはフード姿の男を制止しようとしたが、彼は構わずアンジェリ―ナの前へと近づいてくる。

「久しぶりだな、アンジェリ―ナ」

(その声は……!)

 彼の声を耳にするなり、アンジェリ―ナは全身を凍り付かせた。
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