婚約破棄された悪役令嬢は、気ままな人生を謳歌する
「何日か前から今度は厨房に籠もっていると思ったら、こんなもの作ってたんですね……」
ごま油は、ごまを茹でたあとに砕き、蒸すことで水と油を分離させる。麻袋に入れて油を搾り出せば完成だ。想像以上に骨の折れる作業だったが、ごま油がないと美味しいナムルが作れない。
前世の記憶を取り戻してから実感したことだが、この世界の料理は実に味気なかった。
それもこれも、調味料が塩と胡椒くらいしかないからだ。そのためどんな料理を食べても、とりあえず空腹は満たされるが、心から満足はできない。リタイア後、機会があれば調味料を手作りしてみようと、前世でリサーチしていたのが功を奏した。
ごま油を加えた調味料に、今度はもやしを混ぜ合わせる。
これで、もやしのナムルの完成だ。
「さあ、食べてみて」
ナムルの入った器をトーマスに差し出せば、露骨にイヤそうな顔をされた。
「こんな虫のような見た目の野菜は、あっしは……」
「いいから食べなさい!」
ピシャリと言い切られ、トーマスは渋々といった調子でフォークにもやしをのせる。そして、最も短い一本を、苦渋の表情で口に運んだ。
「ん……?」
ごま油は、ごまを茹でたあとに砕き、蒸すことで水と油を分離させる。麻袋に入れて油を搾り出せば完成だ。想像以上に骨の折れる作業だったが、ごま油がないと美味しいナムルが作れない。
前世の記憶を取り戻してから実感したことだが、この世界の料理は実に味気なかった。
それもこれも、調味料が塩と胡椒くらいしかないからだ。そのためどんな料理を食べても、とりあえず空腹は満たされるが、心から満足はできない。リタイア後、機会があれば調味料を手作りしてみようと、前世でリサーチしていたのが功を奏した。
ごま油を加えた調味料に、今度はもやしを混ぜ合わせる。
これで、もやしのナムルの完成だ。
「さあ、食べてみて」
ナムルの入った器をトーマスに差し出せば、露骨にイヤそうな顔をされた。
「こんな虫のような見た目の野菜は、あっしは……」
「いいから食べなさい!」
ピシャリと言い切られ、トーマスは渋々といった調子でフォークにもやしをのせる。そして、最も短い一本を、苦渋の表情で口に運んだ。
「ん……?」