婚約破棄された悪役令嬢は、気ままな人生を謳歌する
 そのことは、アンジェリ―ナも知っていた。

 世界の最果てに位置するこの界隈は、社会的な弱さが原因で、街から追い出されたあぶれものが集まっている。当然生活は貧しく、食料も不足していた。

「でも、もしこのもやしの栽培方法を皆に教えれば、人々は今よりも満足に生活できるかもしれません」

「なるほど。もやしだったら、日の差さないこの地域でも育てられますもんね」

 トーマスの言いたいことに気づいたのだろう。ララが、深く頷いた。

「アンジェリ―ナ様が人々にもやしの作り方を伝授すれば、空腹から救われた人々は、アンジェリ―ナ様を聖女とあがめるでしょう。そのお噂がいずれ国王の耳に入れば、あわよくば幽閉を解かれるかもしれません。そして尊い聖女様に不当な罰を与えたポンコツ王子は、処罰されるという筋書きですね!」

 次から次へと妄想を膨らませるララは、すっかりその気になっているようだ。

 だが、アンジェリ―ナは静かにかぶりを振った。

「私は、もやしの栽培方法を、人に教えるつもりはないわ」

「ええっ。どうしてですか!?」
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