婚約破棄された悪役令嬢は、気ままな人生を謳歌する
 翌日。アンジェリ―ナは塔を出て、敷地内を歩き回っていた。アンジェリ―ナは幽閉中の身ではあるが、塔を取り囲む鉄柵の内側までは出歩くことを許されていた。

 そうはいっても、相変わらずの曇天で、歩くのも困難なほど草が生い茂り、いたるところに墓があるという劣悪なコンディションだ。

 だが、アンジェリ―ナにはどうしてもやりたいことがあった。

「ここがよさそうね」

 アンジェリ―ナはひときわ大きな墓標の手前に目をつけると、腕まくりをして、まずはその場所の草むしりをはじめた。

 直径五メートルほどの円状に草を抜くと、庭のあちらこちらに転がっている大きめの石を拾い、組み合わせていく。ララが買ってきた針金を組み合わせて作った金網を置けば、下準備オッケーだ。

「野外活動なのにひとりって、たまらないわね。ひとりバーベキュー最高だわ」

 ひとりバーベキューなるものに、前世のアンジェリ―ナは興味を持っていた。ちょうど亡くなる寸前に、巷で密かなブームを巻き起こしていたのだ。
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