婚約破棄された悪役令嬢は、気ままな人生を謳歌する
 コンロのセットが完了したところで、厨房から持ってきた皿のひとつを引き寄せる。中には、もやしの束をベーコンで巻いたものが大量に入っていた。いわゆるもやしのベーコン巻きだ。

 罪人であり幽閉中ではあるが、この塔にはなぜか定期的に充分なほどの物資が支給される。食材や雑貨、真新しいシーツ、ときにはドレスやアクセサリーまで入っていて、当初は驚いた。
 
 あのスチュアートが気を遣ってくれているとは考えにくいから、公爵令嬢という身分上、罪人とはいえ特別な待遇を受けているのかもしれない。

 もしくは、不当に娘を幽閉されたことにおそらく何らかの動きを見せている、実家のランバート公爵家が絡んでいるか。真相は謎のままだ。

 とはいえ、ネクラ人生を満喫するためには、どんなに物資が充実していても足りないものも出てくる。そんな場合は自分で持ち込んだお金でララにおつかいを頼み、まかなっている状態だった。

 前世で作ったことのあるこの料理は、先日、届いた物資の中に大きなベーコンの塊がドンッと入っていたことから思いついた。
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