婚約破棄された悪役令嬢は、気ままな人生を謳歌する
 低予算なのに、ボリューミーな一品。節約生活にはうってつけのおかずだ。それならいっそのこと、ひとりバーベキューで楽しんでしまおうと思いつき、今に至るわけである。

「まずは、火をつけなきゃね」

 前世でも火おこしはやったことがないが、リサーチは済んでいる。

 この世界にも、石炭、新聞、マッチが存在するのは幸いだった。アンジェリ―ナは記憶を頼りに、新聞紙を丸めると、石炭を並べた。そして、火を着けた新聞紙を真ん中に置く。

「これで、すぐに火が回るはず」

 石炭に着火するのを、アンジェリ―ナはうきうきしながら待ち続けた。だが、新聞に着いた火は石炭に燃え移ることなく、間もなくして消えてしまった。

「……あれ?」

 もう一度同じ動作を繰り返すが、やはり火は石炭に着く前に消えてしまう。

「おかしいわね」

 何度やっても同じだった。動画サイトで見たときは簡単そうに火が着いていたのに。まさかこんなに苦戦するとは思いもよらなかった。

「火、着かない……」
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