婚約破棄された悪役令嬢は、気ままな人生を謳歌する
 まあいいわ、と思いつつ、アンジェリ―ナはひとりバーベキューを楽しむことにした。

 シャキシャキとしたもやしに、脂たっぷりのベーコン。曇天の下、香ばしい料理を思う存分味わえば、にやけ顔が止まらない。
 
 ふと、刺すような視線を感じた。

 振り返れば、柵の向こうに、今度は子供が五人立っている。

(増えてる……!)

 そのうちのひとりは、先ほどのバーベキュー師匠だった。おそらく彼が、友達を呼んできたのだろう。不愛想なくせに友達は多いらしい。アンジェリ―ナは彼に軽いジェラシーを感じる。

 気にはなるが、アンジェリ―ナは構わずひとりバーベキューを続けることにした。

 火起こしをしてくれたバーベキュー師匠はともかく、彼らにもやしのベーコン巻きをおごる理由はない。それに、大勢で一緒に食べてしまえば、ひとりバーベキューと呼べないではないか。

 ひとつ、ふたつと口に運ぶ。

『グ~キュルルル』

 みっつ、よっつ。

『キュルルルル~』

「あ~、もうっ!」

 子供たちのお腹の音が気になって、ひとりバーベキューに集中できない。
< 43 / 206 >

この作品をシェア

pagetop