婚約破棄された悪役令嬢は、気ままな人生を謳歌する
 翌朝。

 塔の二階にある自室で、アンジェリ―ナはぐうたらとまどろんでいた。

 王子の婚約者という立場から解放された今、早起きする必要も、コルセットに骨が軋むほどウエストを締め付けられ、動きづらいドレスで着飾る必要もない。

 本音を言うと、大好きなジャージで一日中過ごしていたいところなのだが、そこはララが断固としてゆるしてくれなかった。しぶしぶ起き上がると、ナイトドレスからゆったりとしたエンパイヤドレスに着替える。

「昨日はひとりバーベキューで疲れたし、今日は一日中寝ていようかな~」

 もやしの水替えは、ララかトーマスに頼もう。そう思いながら、アンジェリ―ナが再び布団に潜り込もうとしたときのことだった。 

「アンジェリ―ナ様、たいへんです!」

 ノックもそこそこに、ララが室内に駆け込んでくる。

「アンジェリ―ナ様、この塔が、子供たちに包囲されています!」

「どういうこと?」

「とにかく来てくださいよ!」

 焦るララに無理やりベッドから引き剥がされると、アンジェリ―ナは塔の外に連れて行かれた。

「何、これ……」

 見れば、ララの言う通り、鉄柵の周りをぐるりとみすぼらしい身なりの子供たちが取り囲んでいる。その全員に、アンジェリ―ナは見覚えがあった。昨日、もやしのベーコン巻きをあげた子供たちだ。
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