婚約破棄された悪役令嬢は、気ままな人生を謳歌する
◇恋愛はするものではなく観察するものです
 アンジェリ―ナが“悪魔の塔”に幽閉されて二週間目。

 もやし栽培も、ひとりバーベキューも満喫したアンジェリ―ナは、次に実行するネクラ趣味を決めるべく、食堂で例のリストを眺めていた。

 すると、ドンドン、と扉をノックする音が聞こえる。

「ララ? いないの?」

 朝からせっせと掃除に励んでいたララは、もしかすると最上階にいるのかもしれない。最上階からは、階下の物音は聞こえにくい。

「トーマスかしら?」

(でも、トーマスなら勝手に入ってくるはずよね。おかしいわ)

 そう思いつつも、アンジェリ―ナは食堂を離れると、重い石扉をうんせと開けた。

 扉の向こうに立っていたのは、見たことのない男だった。

 騎士らしき装いをしていて、背が高い。黒髪に、鋭いブルーの瞳、整った顔立ち。

「何か?」

 アンジェリ―ナが首を傾げると、呆然としていた男はみるみる顔を赤くした。それから、赤らんだ顔を隠すようにアンジェリ―ナから顔を背けながら、口を開く。

「あの。お、俺は……」

 ――バンッ!

 男が何かを言い終える前に、アンジェリ―ナは勢いよく扉を閉めた。
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