婚約破棄された悪役令嬢は、気ままな人生を謳歌する
「......そう。わかってくださっているなら、いいんです」

 まさか、こんなにもすんなり認めてもらえるとは思わなかった。不意を突かれ、アンジェリ―ナはいささか動揺した。

「ですが、私が心変わりすることはございません。ですから――」

「俺もここに居座ることにしたのです」

 アンジェリ―ナの言葉を遮って、ビクターが答えた。

「――は?」

「愛しているあなたが愛している塔を、俺も愛したい。ここにいれば、この塔の魅力が分かるのではないかと考えました。それくらい、俺はあなたを愛しています」

(愛してる、愛してるって……)

 まるで耳にタコができそうだ。それに、こんなに容易く使う言葉ではないはずだ。少なくとも、アンジェリ―ナが前世を過ごした日本という国ではそうだった。

 アンジェリ―ナは、威嚇するように、キッと目の前の美丈夫を睨みつけた。

「ですが、ここは王族の管轄。私は幽閉の権利を得ていますが、あなたは得ていません。王族の管轄区に無断で住まうのは、違法ですわ」
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