三月のバスで待ってる



「あーっ、疲れたぁ」
杏奈が伸びをして言った。
放課後、杏奈が「今日は部活が休みだから一緒に模試の勉強しよう」と言うので、1時間ほど残って勉強をした。
図書室ではほかにも数人勉強している人や本を読んでいる人がいて、話すことができないぶん、誘惑の多い自分の部屋よりも集中できた。
帰り道、杏奈が自転車を押しながら、隣を歩く。
「そういえば、進展あった?運転手さんと」
杏奈が興味津々に言うから、私は苦笑する。
「なにもないよ。ただの私の片思いだし」
それにーーと言いかけて、やっぱり気のせいかもしれないし、とやめた。
「そっかあ。でも、うまくいってほしいな。深月が好きになった人なら、絶対いい人だと思うし」
「うん、ありがとう」
このままでいい、ずっと片思いでもいいと、思っていた。
でも最近は、少し変わってきていた。
それには、理由があったのだ。
「じゃ、また明日ね」
「バイバイ」
手を振って別れて、バス停に向かった。
< 100 / 155 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop