三月のバスで待ってる
彼女たちは中学の同級生で、友達だった。私たちはいつも、どこに行くにも一緒だった。4人でひとつ、ずっと仲良しでいようね、そんなことをいつも言っていたのに。
2年のある時、些細なことがきっかけで、ケンカをした。
『ひどい。そんなこと思ってたなんて……あんたなんか、もう友達じゃない』
彼女たちは白い目で私を見ながら、そう言い放った。
ケンカの原因は私にもあった。当時、言いたいことをはっきり言う性格だった私は、つい感情に任せて言いすぎてしまったのだ。
それでも、元に戻れると思っていた。だって、あんなにいつも一緒だったんだから、そう信じていた。
でも、一度壊れた関係は、決して元には戻らなかった。彼女たちは私を徹底的に無視しはじめ、それだけでは飽き足らず、私の悪口を周囲に言いふらした。ほとんど出任せで、私がそんなの嘘、そんなことしてないと反論しても、3人の力には勝てなかった。
そして、いじめがはじまった。標的を見つけた獣のように、どんどんエスカレートしていった。
誰にも言えなかった。抗う力もなかった。ただ、耐えることしかできなかった。
毎日、暗闇の中で考えていた。
どうして、こんなことができるのか。
どうして、ここまでされなければいけないのか。
どうすれば、やめてくれるのか。
どうしてなんて、答えはなかったんだ。いまならわかる。彼女たちは、ただ楽しんでいたんだ。ただの憂さ晴らし。子どもがオモチャで遊ぶみたいに、楽しそうに暴力を振るった。子どもがイタズラするみたいに、平気で汚いことをした。人間のすることじゃなかった。あの時の彼女たちの顔は、エサを狙う獣そのものだった。
そして、いまもーー
久しぶりにエサを見つけて楽しんでいる彼女たちは、あの時と同じ顔をしている。人を人とも思わない醜悪な顔。
時間が経っても、あの時のまま、時間が止まったみたいに。