三月のバスで待ってる
「変わってないね」
私は3人を見上げて言った。
「……は?」
「3年前、私をいじめてた時から、何も変わってない」
目を逸らしちゃいけない。
何もできなかったあの頃とは違う。
「は、何言ってんのこいつ」
「意味わかんないし」
「生意気なんだけどー」
笑われても気にしない。気にしては行けない。
私は無視して続けた。
「私は、変わったよ。もうひとりじゃない。大切な友達ができたから」
偽物じゃない、本当の友達。ずっと一緒にいられる保証なんてどこにもないけれど、ひとりだった私に手を差し伸べてくれた、ずっと一緒にいたいと思える人たち。
「な……」
3人の表情が変わった。まさか言い返されると思わなかったのだろう。
一瞬、ビクッとした、その時。
「あなたたち、誰?」
後ろから、声がした。
途端、肩の力が一気に抜けるような安心感に包まれた。
杏奈が一歩前に出て言う。
「深月の友達、って感じじゃないよね?」
「違うよ。前の学校の、元クラスメイト」
その言葉で察したのだろう、杏奈はハッと顔を硬らせた。
「そうだよーってか喋ってただけなんだけど」
「じゃあ、交代してくれる?今度はあたしがこの子と喋りたいから」
笑って言うけれど、目が少しも笑っていない。
杏奈の怒ったところを、初めて見たかもしれない。
優しくて思いやりのある彼女が、私のために怒ってくれているのだと思うと、胸がじんと熱くなった。
「めんどくさ」
「どーでもいいわ」
「行こー」
彼女たちは急に興味をなくしたみたいに、背を向けて去っていった。
「深月、大丈夫?」
心配そうに覗き込まれて、私は笑って頷いた。
無理につくったんじゃなく、安心したら、自然と笑うことができた。
「うん、ありがとう」
「もー、びっくりしたよ。早めに戻ってきてよかったー」
ねえ深月、と杏奈が私の肩に手を置いて言った。
「大切な友達って言ってくれて、ありがとね」
私は少し照れながら、「うん」とまた笑った。