三月のバスで待ってる
「だから、お父さんにありがとうって言いたいけど、なかなか言えなくて……お父さん、努力するって言ってたけど、あんまり家にいないし」
「……うん」
お父さんは、家族に興味がない人なんかじゃなかった。全然家に帰ってこないし、たまに顔を合わせても会話もないから、そう思い込んでいただけだった。本当は、家族のことを一番に考えている、優しい人だった。考えすぎて、接し方がわからなくなってしまったのかもしれない。
「お姉ちゃんも、あげない?」
不意打ちのような言葉に、私は驚いて深香を見つめた。
「明日の朝、一緒にお父さんに渡そうよ。あたし、いつもより早起きするから」
「……うん」
頷くのと同時に、目に涙が浮かんだ。
いつの間にこんなに強くなったんだろう。
3つも歳下の妹が、私よりずっとたくましく見えた。