三月のバスで待ってる

「まさかもらえると思わなかったなあ。ほんとにうれしい、ありがとう」

「あの、いつもお世話になってるので……勉強教えてもらったり、話聞いてもらったり」

ごにょごにょと言い訳のように続ける私に、想太はふいに、真面目な顔になった。

「ーー全部、俺がしたかったことだから」

その表情に、私は思わずドキリとした。

それはほんの一瞬のことで、想太はすぐに笑顔に戻った。

「本当にありがとう。大事に食べるよ」

と想太は何度も、大げさだと言いたくなるくらい、「ありがとう」を繰り返した。

そんな彼を見つめながら、

ーー好きです。

心の中で、そっと、つぶやいた。
大好きなその笑顔を、ずっと見ていたかった。


この時はまだ知らなかった。
この日を境に何かが変わるなんて、思いもしなかったんだ。

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