三月のバスで待ってる
12.『櫻の木』
バスに乗って病院へ向かった。
学校を通り過ぎ、その先にある総合病院前で降りた。
「頼んだよ」
と関さんに言われて、私は頷いて応えた。
広い病院の敷地内を、私は走って通り抜けた。想太のいる病棟がどこかわからなくて、案内板の地図を見る時間すらもどかしかった。
ようやく病室にたどり着く頃には、息が切れ、髪は乱れ、体じゅう汗だくで、ひどい有様だったけれど、そんなこと気にしていられない。
はやく、はやく、行かなきゃーーその想いだけで、想太のいる集中治療室に向かった。
通りかかった女性看護師を呼び止めて、
「三住さんがいるのはここですか」
と息も切れ切れに尋ねた。
「はい、そうですが……」
看護師は困惑したように眉を下げる。
「申し訳ないですが、三住さんは家族以外面会禁止となっています」
「え……」
考えもしなかった。意識不明の重体だと、会わせてももらえないのだろうか。
「あの、すぐに帰りますから。どうしても、顔だけでも見たいんです」
「でも……ええと、一応ご家族の方に連絡を」
看護師がそう言って、わずかな希望が見えかけたその時。
「その必要はないわ」
と後ろから冷たく切り捨てるような声がした。
ドクン、と嫌な音が胸を打つ。
この声ーー
「何度確認されようと、いっさい面会は認めませんので」
想太の母親だった。