三月のバスで待ってる
顔立ちは想太によく似ているのに、全然違う温度を感じさせない表情。何を言っても折れなさそうなはっきりとした口調に、私は挫けそうになるけれど、ここで引き下がってはいけない。
「どうしてですか」
私は怯みそうになる声を絞り出して言った。
「顔を見て、声をかけることが、いけないことですか?」
ーーこの人は、想太さんを苦しめていた人。
いつも笑顔を絶やさない想太に、あんな辛そうな顔をさせた人。
家族だからって、何をしてもいいわけじゃない。
「そうね」
と想太の母親は無感情に冷たく言い放った。
「意識不明なのに声をかけてどうするの?それで目を覚ますと思う?あなたの声は届かない。治療は医療機関に任せて帰りなさい。目障りだから」