三月のバスで待ってる
ーーどうして。
私は愕然としながら彼女を見た。
自分の子どもが危険な時に、どうしてそんな冷たいことを言えるのだろう。
声をかけたら意識が戻るかどうかなんて、わからない。そう、誰にもわからない。もしかして、かすかにでも、届くことだってあるかもしれないのに。どうしてないと言い切れるの。
「こんなところで暇を潰しているほど私は暇じゃないんだけど」
彼女は煩わしそうに長い髪を掻きあげて、ため息をついた。
「あなた、学校はどうしたの?」
「え……」
唐突な質問の意味がわからず、私は何も答えられなかった。
「制服を着てるということは、休んだのね。ここに来るために。そんな冷静さのかけらもなくその場の感情だけで行動するような人間は、あの子の周りに必要ない。あなたのような子どもはとくにね」
「あの……」
看護師が見かねたように細々とした声をあげた。
「先生がお呼びですので、お母様中へ……」
「わかりました」
彼女はもう私に見向きもせず、看護師に続いて集中治療室に入っていった。