三月のバスで待ってる
その時、はっと息を呑んだ。
視界の先。
道路の反対側に、人が立っていた。
私は目を見開いて見つめる。
その人は、ゆっくりとこっちに向かって歩いてくる。
そして、ふわりと花が開くように笑った。
「お待たせ、深月ちゃん。卒業おめでとう」
「……っ!」
幻かと思った。
でもーー
「会いたかった」
彼は私を抱きしめてそう言った。
その温もりは、幻なんかじゃない、間違いなくそこにあるものだった。
「想太さん」
やっと発することができた声が小さく震えた。
やっとーーやっと会えた。
「手紙、ありがとう」
耳元で響く想太の声。
私の、大好きな声。
「俺も、君のことが好きだ」
私の、大好きな笑顔。
「もう一度会えたら、一番に言いたかった。やっと言えた」