三月のバスで待ってる


手紙ーー
1年前のバレンタインの日、私は箱の中に手紙を入れた。

『想太さん。
いつもありがとうございます。
声をかけてくれて、
話を聞いてくれて、
励ましてくれて、
そばにいてくれて、
支えてくれて、
笑ってくれて、
ありがとうございます。
あなたの笑顔に、何度も救われました。
辛い時、何度も想太さんの言葉を思い出しました。
あなたのことが好きです。』

告白なんて、私には無理だと思った。
返事が怖かった。私のことなんて好きになってもらえるはずがない。
でも、長い間築いてきた関係を変えようとしている杏奈や、悩みながら前に進もうとしている深香の言葉に、私は心を打たれた。
伝えたら、後悔するかもしれない。
でも、伝えなかったら、もっと後悔するかもしれない。
直接伝えることはできそうになかったから、手紙を書いた。
手紙でも充分恥ずかしかったけれど、後悔はしなかった。
だって、私は知っていたから。
ずっと変わらないものなんてない。
いつでも会える保証なんてどこにもない。
当たり前だと思っていた日常が、突然消えてしまうこともあるのだと。




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