三月のバスで待ってる
楽しい時間はあっという間に過ぎた。
さっき行ったばかりだと思っていたバスが、また1周して戻ってきた。
目の前に停まったバスのドアが開いて、関さんが目をこれでもかというくらい見開いた。そして、くしゃっと顔を崩して笑った。
「よ、久しぶり」
「お久しぶりです」
想太が嬉しそうに答えた。
「おふたりさん、乗るかい?」
「はい」
間髪入れずに答えた想太に、私はびっくりして尋ねる。
「えっ?乗るんですか?」
「今日までは客だから。一緒に行きたい場所があるんだ」
そう言って、想太は私の手を引いた。
「さ、行こう」
私は戸惑いながら、でも笑って、
「はい」
と頷いた。
どこへでも行ける、そう思った。
2人ならいままでよりずっと遠く、
どこへだって。