三月のバスで待ってる



家に帰ると、お母さんがバタバタと急いで玄関に出てきた。

「深月!どこに行ってたの!?」

肩を掴まれ、ほとんど叫び声に近い勢いで詰め寄られ、私の視界は途端にカーテンが閉められたように暗くなる。

「ノートを買いに……」

「それは聞いたわよ。ノートを買うだけでどうしてこんなに時間がかかるのって聞いてるの。お願いだから、時間はきちんと守ってちょうだい。こんなに心配してるのがわからないの!?」

「……ごめんなさい」

うつむく私に、お母さんは大きくため息を吐く。

「まあ、よかったわ。無事に帰ってきてくれて。明日から新しい学校なんだから、しっかりしてちょうだいね」

「…………」

無事って、まだ昼間だし。ちょっと買い物に出かけただけで、何かあるわけないのに。

大げさな言い方に、私までため息をつきたくなる。

少し外に出かけただけでこれだ。出かける前には必ず行き場所と帰ってくる時間を伝え、その時間までに帰ってこないと、何かあったのか、どうして時間を守れないのか、とすごい剣幕で尋問される。

少しでも口ごたえしようものなら、今度は「そんなことを言うならGPSをつけるから」と言い出す。べつに遊びに行きたいわけじゃないけれど、GPSで常に位置をチェックされてまでガミガミ言われるのは御免だった。

お母さんの私に対する態度は、はっきり言って異常だと思う。

もう高2なんだからもう少し自由にさせてほしい、と言いたくもなるけれど、文句は言えない。

心配される原因は、私にあるのだから。



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