三月のバスで待ってる

ーー何を比べているんだろう。想太さんが誰とどういう関係だろうと、私には関係ないのに。

「あ、おかえり、深月ちゃん」

と想太が私に気づいて手をあげた。

「こんにちは、櫻井さん。こんなところで会うなんてびっくりしちゃったわ」

2人して屈託のない笑みを向けてきて、私は余計にどうしていいかわからなくなってしまう。

だって、2人の姿がすごく、お似合いだったから。邪魔しちゃいけないと思ったから。

「あの……今日は本当にありがとうございました。助かりました」

私はしどろもどろに言った。

「それで私、ちょっと用事を思い出して……これで帰ります」

「えっ、もう帰るの?」

「すみません、じゃあ」

頭を下げて、それからくるりと背を向けた。

「気をつけてねー!」と慌てて言う想太の声を聞きながら、私は振り向かずに駆け足で螺旋階段を降りていった。
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