三月のバスで待ってる

『用事大丈夫だった?気をつけて家に帰ってね。テスト頑張って』

心配する内容に、私はまたチクリと胸が痛んだ。

『大丈夫です。突然帰ってしまってごめんなさい。今日は本当にありがとうございました。テスト頑張ります。』

携帯をしまって、しばらくそこに座ったまま、大人なんだな、と当たり前のことを思った。

彼は私より9歳も年上だ。それはわかっているけれど、いままで歳の差をあまり意識していなかった。近くも遠くもない微妙な距離感に、同級生とは違う話しやすさも感じていた。

だけど、この気持ちに気づいた途端、その差がどうしようもなく大きな壁に思えた。

……話しやすかったのは、想太が私に合わせてくれていたから。
毎日こえをかけてくれたり、勉強を教えてくれたりしたのも、気を遣ってくれていたんだ。

いまさらそんな簡単なことに気づいた。

年齢だけじゃない。性格も、見た目も、立場も、彼と私じゃ、なにもかも違いすぎた。

ーーこんなに違うのに、どうして。

最初から望みなんてないのに。

好きになっても、傷つくだけとわかっているのに。

どうして、好きになってしまったんだろう。


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