三月のバスで待ってる
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エンジンもかかっていないのに、バスの中はなんだか温かかった。
窓の外は薄暗く、薄いカーテン越しのように青白い雨の景色に溶け込んでいる。人のいないバス停に停まるバスの中、世界に私たち2人きりになったみたいだった。
普段なら絶対に緊張するはずなのに、
いまは、ほかに誰も見ていないし話を聞いていないということが、これ以上ないほど私を安心させてくれた。
運転席のすぐ後ろの席、通路を挟んで2人向かい合って座った。
何から話せばいいのかわからない。上手く話せる自信もまったくない。
でも、想太は急かしたりしないで待ってくれる。ゆっくりでいいよと、その目が伝えてくれる。
「私はーー」
私は話した。たとたどしく、時々声に詰まりながら、いままで誰にも言わなかったこと、言えなかったことーー
雨の中に流すように、全部吐き出した。