三月のバスで待ってる



翌朝。熱はすっかり引いて、いつも通り学校に行く支度をした。玄関で靴を履いていると、お母さんに呼び止められた。
「昨日の運転手さんに、お礼渡してくれる?」
「うん、わかった」
受け取ったそれは、お菓子だった。
「じゃ、行ってきます」
「いってらっしゃい」
私は手を振ってドアを閉めた。
相変わらず、お父さんと深香とは、同じ家に住んでいても、ほとんど顔を合わせない。
いままでは、仕方ないことと思っていた。私のせいだから、避けられても仕方ないと。でも、なにかできることがあるかもしれない。お母さんと向き合って話すことができたみたいに、変われるかもしれない。
ーーいまは難しくても、いつか。
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