ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
「そっか・・・」
『そうです。ここで子供にゴハンを食べさせたことは謝ります。だから、先生は早くご自分の部署に戻って下さい。』
自らの髪を掴んでいた左手を勢いよくふりほどき小さく溜息をついたその人と
失礼な態度とわかっていながらも相変わらず強気なままの私。
そんな私の太ももの上でお弁当の下敷きになっていた問診表用のバインダーをスッと引き抜いたその人。
「えっと、高梨伶菜・・25才・・・なになに・・・割れた花瓶に手を突っ込んでしまって出血?!ドジだねー。」
バインダーに挟まれた書きかけの問診表に目を落としながら、涼しげな顔してそれを読み上げたその人。
さっきの失礼な態度をとってしまって・・という表現、撤回!!!!!!
人の太ももの上の載せてあったバインダーを無言で抜き取るなんて、そういう行動もあり得ないでしょ!
しかも、医者が怪我人に面と向かって
ドジなんて言う?!
誰か、
このあり得ない医者の緊急コールを鳴らして!!!!
さっきのナオフミさんのように
この場所からいち早く撤収してもらえるような緊急コールってヤツを!!
パオーン、パオーン・・・・・
えっ?!
ゾウの鳴き声?!
なんでこんなトコロで?
「ハイ、森村です。・・・あー今ね、ちょうどご本人の目の前にいるトコロ・・・・あーい、了解!ここから移動するかもしれないから準備よろしくね!」
さっきのゾウの鳴き声って
まさか携帯電話の着信音?!
こ、この人、かなりオトボケ?!
電話応対の内容から見ると
とりあえず緊急コールっぽいから
ちょうどよかった///
でも、なんで着信音がゾウなのさ?
ゾウ・・・なんで?
『ゾウ、なんで・・・ゾウなのさ?』
最近気をつけていたのについつい出てしまった私の悪いクセ。
頭の中での呟きを口でも呟いてしまうってヤツ。
ヤバイ、今の聞かれた?
ピッ!
携帯電話の通話終了ボタンを押したその人。
よかった、今、電話を切ったというコトは
さっきの呟き、聞かれてないよね
「そうそう、ゾウの着信音、癒されるだろ?整形外科からの呼び出しってすぐわかるようにしてあるんだよ。」
水戸黄門様が悪者に印籠を突き出して見せつけるように
携帯電話を縦向きに持ったまま私の目の前にそれを押し出してきたその人。
”そうそう、、ゾウの鳴き声の着信音・・・”って
やっぱりさっきの私の呟き、聞こえてた?!
しかも
整形外科からの呼び出しって・・・・
まさかこの人
もうすぐ来るって言ってた医師って
『まさか、この人?・・・もうすぐ来る医師って・・・・』