ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
「そうねえ、今、産科の日詠先生からも整形外科の矢野先生宛に院内紹介状が届いてましたしね・・・」
看護師さんは傾いていた私の体を支えながら困った表情で私を、そして白衣を着たその男を相次いで見つめた。
フッ!
いきなり鼻先で軽く笑ってのけた白衣姿の男。
「矢野先生は昨日から東京で、、、学会参加中!・・なので彼に診てもらうのは無理だねえ~」
そしてワガママを訴える子供を軽くあしらいながらなだめるような口調で私に語りかけたその人。
『じゃあ、他の整形外科の先生でいいので・・・この先生以外の・・・』
そんな彼のほうは一切見ないで、体を支えて貰っている状態のまま必死に看護師さんに訴え続けた私。
そんな私に看護師さんは
「スミマセン、他にも整形外科のドクターはいるんですが、手の怪我を診ることができるのは、矢野先生と・・・この森村先生だけなんです。」
申し訳なさそうな顔をしながらそう言った。
『じゃ、他の病院に行きます!!! 看護師さん、どこか手の怪我を治してくれる病院、他にご存じないですか?』
みっともないけれど、看護師さんの右腕に強くすがって訴えた私。
他の病院を教えて欲しいなんて
とても失礼なことを申し上げているのは充分わかっていたが
それぐらい、この森村っていう
なんともふざけているというか人をおちょくっている態度のお医者さんに
自分の手を診て貰いたくなかった。
「ごめんなさい、私、救急科の看護師なので、整形外科の詳しい専門分野とかわからないの・・・」
さっき、ナオフミさんと一緒に居たときは
あんなにも毅然とした態度で彼に注意をしていたのに
今は、そんな態度は微塵も感じられないそのベテラン看護師さん。
そんな彼女の様子を見た私は
彼女にこれ以上聴いても良い返事は出てこないことを感じ、
『スミマセン、もう失礼します!』
私はそう言い残し、祐希が乗っているベビーカーを勢いよく押し、この場から逃げた。
・・・つもりだった。だけど、