ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来


そして完全に身動きが取れなくなった私。

冗談じゃない

“完璧に治してやる”なんて
そんな上から目線な態度
ますます信用できない!

だって、

『絶対信用できないっ!』

祐希が産まれる前
いや正確に言うと、
自ら電車に飛び込もうとしていたトコロを間一髪で制止され
運ばれた病院の超音波検査室で妊娠13週目であるというのを日詠医師から告げられた時

私は
自ら命を絶とうとした自分の行為が
お腹の中の子供まで殺そうとしていた行為に等しいということに気がつき
そんな自分が子供を産みちゃんと育てられるかという不安に襲われて
私は日詠医師の前から逃げた

でも、あの時は逃げ切れなかった

彼の・・・“何度でも、、なんとしてでも救ってやる”という言葉に
死ぬという行為を諦めた



でも、今は
“完璧に治せるのは半径10km以内には俺しかいない”なんて

半径10kmなんて
そんな中途半端は数字だけで
逃げるのを諦めるわけにはいかない

しかも、私はアナタみたいな横柄な態度をとる人
ダイッキライなんだから!!!!


だから

『半径10km以内なんて大したコトないじゃない!だから、もうほっといてください!』

そう叫びながら
自分が今持っている力を総動員して
掴まれている自分の右手を強く振りきり、再び逃げようとした私だったけれど

「信用させてやる・・半径10kmは訂正だ!!!!」

自分の発した叫び声に負けないくらいの勢いでその男に怒鳴られた。


『・・・・・・・・・』

あのふざけた、人をおちょくるような態度だったその男
上から目線の態度にもなってたその男が
真剣な眼差しに一変しただけでなく、そこから更に
怒鳴るという行為にまでヒートアップ。

さすがの私も凍りついた。



「半径10kmじゃなくて、半径50km、いや、全国、いや、それでもキミが納得しないなら全世界・・・全世界を見渡してもキミのその手を治してやれるのは俺しかいない!だから俺に預けろ!!!」


相変わらず強い口調で
しかも鋭い目つきでそういってのけた森村というその男。
いや、鋭いというよりも
自信に満ちた瞳と言ったほうが適切かもしれない。

全世界?!
しかもそんな自信たっぷりに

全世界見渡しても、私の手を治せるのは
俺しかいないなんて
・・・思い上がりもいいトコだよ

恋愛に憧れてた頃の私なら、そんなに力強くそんな言葉を口にされたら
胸がすぐにドキッとするトコロだけど

アナタには
上から目線、オレ様態度な上に
いかにも現実離れをしてるような発言をしているアナタだけには
・・・そんな想い、抱くはずがない

それどころか
現実はそんなに甘くないというコトを
めいいっぱい思い知らせてあげたくなるッ


「じゃあ、やってみてくださいよ!私の手を完璧に治せるかどうかやってみて下さい!本当に世界一かどうか私が判定してあげますから。私は世界一のドクター、知ってますからッ!」


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