ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来



「縫合した腱が、今の時期、最も脆弱な状態であるのは日詠さんもおわかりですよね・・・?そんな状態で彼女が自宅に戻って、家事、育児に取り組んだら、腱が再断裂しかねない。」

「・・・・・・・・」

「オレ、彼女がどういう選択をしようとも、彼女がオレを拒まない限り、、自分は彼女の左手が完治するまで、彼女の主治医を務めていくつもりです。弱気になって途中で投げ出すなんてマネはせずに、ちゃんと最後まで。」

「・・・・・・・・」

「だから、縫合腱の保護と再断裂の予防、そして重点的なリハビリの実施目的にて彼女の入院期間の延長を指示します。」



森村医師は冷静な態度は一向に変化する様子はなく、
更に彼は一人の医師としての見解と方針までもをきっちりと述べた。


そんな彼と向かい合っているナオフミさんはというと
いまだに彼の胸倉を掴んだままではいるものの
彼の横顔からは先程のような怒りという感情は
さほど伝わってはこなかった。




弱気になって途中で投げ出すマネはせずに、ちゃんと最後までという言葉
その言葉、私の主治医だったナオフミさんにはどう聞こえたんだろう?



森村医師の発言によって

ナオフミさんが
冷静になったのか
それとも
落胆してしまったのか

それすらわからないぐらい
ココロが不安定に揺れ動き続けている私。



そんな私にもわかっているコト


それは・・・・




「・・・でもそれはただの言い訳です。本当のところはアナタのところに帰って欲しくない・・・・・彼女がアナタのところに戻ったら、オレ、完璧・・・不利ですから。」



森村医師が
私の未来の行方を
そして
私とナオフミさん
私達の未来の行方の主導権を握りかけているというコトだけだった。




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