一粒トリュフに想いを込めて
そんなことを考えていると、奥でガタンッと物音がした

洗い場の奥には仕切りがあり、そこには小さなベンチもあるけど、この時間だし、誰もいないと思ってた…

恐る恐る振り返りと……

「えっ……」

「あー、驚かせてごめんね?」


そう言って苦笑いをする結城さんがいた


「あっ、いえ…こちらこそ…気付かなくて…。
あ、えっと、お疲れ様です。
あの、すぐに終わらせますから…」

「ははっ、そんなに慌てなくても良いよ。
それよりさ、チョコ作るんだ?」

「え?」

「話聞こえてたから」

「あ、はい、そうですね」

「ふ〜ん」

近くでこんなに話すなんて初めてでどうしたら良いのかわからない……
ちゃんと会話になってるんだろうか……


「豊川さんは誰かにあげるの?
彼氏とか?」

「えっ?!彼氏っ?!?!
いやいや、そんなっ…」

わたしに彼氏がいるように見えるんだろうか
いやいや、そんなはずない

社会人としてのお世辞なのに、こんなに動揺してしまうなんて恥ずかし過ぎる…


というか、わたしの名前知ってたんだ

やっぱり仕事の出来る人は社員みんなの名前を覚えてるもんなんだな



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