一粒トリュフに想いを込めて
給湯室には結城さんとわたしのふたり

そして手首は掴まれたまま


「あの…手を…」

「あ、ごめん」

そう言うとそっと手を離してくれた

「あの、じゃあ、わたしも…」

失礼しますって言おうとしたら


「あいつにチョコ渡したの?」

「え?あいつって中条さんですか?
渡してないですよ?」

なんでわたしが中条さんに渡すんだろう?


「ほんとに?あいつ、さっきありがとうみたいなこと言ってなかった?」

「ああ、あれはみなみさんから手作りチョコをもらったからで。
わたしが一緒にチョコ作りをしたから、そのお礼だとおもいますよ?」

「この前言ってたやつか」

「そうですよ。だから、大丈夫です。
ふたりの邪魔をしようなんて思ってないです」


きっと中条さんたちの心配をしてたんだろうな

わたしなんかが、誰かの恋を邪魔出来るはずもないのに…


「あの、じゃあ、これで失礼しますね」


誤解も解けただろうし、もうここにいる意味ないよね

結城さんも用事があって戻ってきたみたいだし
はやく仕事終わらせてデートに行くんだろうな


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