一粒トリュフに想いを込めて
それでも、経済的に迷惑をかけてしまうことに罪悪感がなかったわけじゃない

高校を出たら働こう
そう思っていたわたしに、叔母さんが大学に行きなさいと言ってくれた

「そんなに急いで家を出ようとしないで。
寂しすぎるじゃない…」

涙を浮かべながら、そんな風に言ってくれた



その後、わたしは特待生制度を利用して、無事大学に合格することが出来た

大学の定める学力を維持出来れば、学費を半分免除されるというものだった
それでも学費がゼロになるわけじゃない

少しでも叔父夫婦の負担にならないように、わたしはバイトを始めることにした


ただ、学力を落とすことの出来ないわたしには、勉強の時間を確保する必要がある

そこで、土日に休みが取りやすいという理由で、いくつものオフィスビルがある最寄り駅のコーヒーショップの面接を受けた

オーナーがとても優しい人で、事情を話すと勤務を平日のみにしてくれた
その代わり、平日は大学が終わる夕方から閉店の23時までほぼ毎日働いた




そんなわけで、時間的にも経済的にも、恋をする余裕が全くない学生時代だった







< 5 / 35 >

この作品をシェア

pagetop