一粒トリュフに想いを込めて
そんな学生時代だったけれど、バイト生活を過ごしていく中で気になる人が出来たりもした

大学3年になったばかりの春
相手はスーツをきれいに着こなし、笑顔が爽やかなサラリーマンだった

彼に気持ちを伝えようなんて思わない
彼とどうにかなりたいなんて思わない

彼と会えた日は胸の高鳴りを覚え
彼の笑顔が見れた日はドキドキが最高潮
そして…
彼と話せた日は1日幸せな気分でいられた


そんな淡い淡い恋心

それで十分
十分過ぎるくらい幸せだった


勉強とバイトの毎日の中にある、ほんの少しときめくことが出来る幸せな時間
ほんの少し現実から離れ夢を見れる時間

それだけで、またがんばろうと思えた



そんな淡い恋心は、大学4年、大学卒業と共にバイトも卒業することになり幕を閉じた

春からはコーヒーショップのある駅が最寄りの企業に就職が決まっていたけれど、お店が無ければ会うことはない

いくら同じような生活圏だったとしても、この駅を利用する会社員の数を思うと、会うことなんて奇跡に近い

いや、もしどこかで見かけたとしても、わたしたちは知人ですらない他人

お店では何度か話したことはあっても、それは店員とお客様だから成り立つ会話
決して知り合い程度でもない、ただの他人だ


だからこそ、卒業と共に、恋心も終わらせた


入社した会社で、その人と再会するまでは


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