強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
結婚式
蕾だった桜の花がいつになくのんびりと咲き始め、ようやく満開を迎えた四月の上旬。
ステンドグラスの優しい光に包まれたチャペルには、パイプオルガンの幻想的な音色が響き渡っている。
保科明……ではなくて、今日から姿月明、二十四歳。私は今この場所で結婚式を挙げている。
けれど……
「病めるときも、健やかなるときも――」
牧師さんの言葉を聞きながら思う。
もしかしてこの結婚は私にとって都合のいい夢か、もしくは壮大なドッキリなのかもしれない。
そう疑ってしまうほど、私は今日のこの日を信じることができない。
「――はい。誓います」
隣から聞こえた爽やかな低音ボイスに胸がドキッと高鳴った。
気付かれないようにさり気なく視線を流すと、そこには真っ白なタキシードを華麗に着こなす幼馴染がいる。
姿月真夜、三十一歳。
さらさらな栗色の髪に、くっきりとした目鼻立ち、そして透き通るように滑らかな肌。
海外でも活躍していた元モデルの母を持つ真夜は、とても整った顔立ちをしている。加えて身長百八十八センチの高身長で、手足がすらりと長い。
今も、真っ白なタキシードの左胸に一凛の真っ赤なバラの花を上品に飾っているその姿は、まるで物語の世界から飛び出してきた王子様のようだ。
……この人はムカつくくらいにかっこいい。
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