強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
幼馴染から夫婦へ
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「わざわざすまなかったね、明ちゃん」
「いえ。真夜からおじさんが入院したって聞いて心配で。でも、元気そうでよかった」
真夜にはお見舞いは必要ないと言われたけれどやっぱり心配で、その日の仕事終わり、おじさんが入院をしている病院へと足を運んだ。
職場から電車で一駅ということもあり、面会時間にはなんとか間に合うことができた。
おじさんの様子を見るまでは心配だったけれど、思っていたよりも顔色が良くて安心する。
「すみません、急いで来たからお見舞いの品を何も持ってこなくて」
「いや、いいんだよ。こうして顔を見に来てくれただけでも嬉しいから。真夜なんか連絡のひとつ寄越しやしないんだから冷たいやつだ。まったくひどい息子だよ」
辛辣な言葉のわりにおじさんの表情は柔らかい。
子供の頃から思っていたけれど、おじさんは巨大なホテルグループを率いる社長のわりにのんびりとしていて、いつもにこにこと笑っている朗らかな人だ。
そんな穏和で心優しいおじさんだからこそ、私の実家の和食料理屋の危機を聞き付けて、すぐに救いの手を差し伸べてくれたのかもしれない。
シヅキホテルグループの援助がなかったら、今頃、保しなはきっと潰れていた。