強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
「……マジでやめろよ、お前」

歩いていた足を止めると、真夜は視線を空へと投げた。そのまま重たい息を吐くと、額を手で覆う。

「ずるいんだよ。そうやって俺の心をぐちゃぐちゃにして」

「え」

「いや、何でもない」

真夜は首を振りながらそう告げると、止めていた足を再び前に進める。そして、少し歩いたところでぼそっと呟いた。


「今、明のことすごく抱き締めたいんだけど」

「は?」

「いいかな、抱き締めて」

「や、やだよ」

私はとっさに真夜から距離を取った。こんな人目の着く海岸沿いの道で抱き合っていたら目立つに決まっている。絶対にやだ。

「じゃあ手握っていい?」

私が返事をするより先に、真夜の右手が私の左手をぎゅっと握った。

「真夜の手冷たいんだけど」

「明の手はあったかい」

「……」

仕方ない。冷たい真夜の手を暖めてあげると思って、手を繋ぐぐらいはよしとしよう。

私からもぎゅっと真夜の手を握り返すと、真夜もまた私の手を握る手に軽く力をこめた。


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