強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
それから少し歩くと、私たちは車を停めてあるコインパーキングへと戻った。
車に乗り込むと、「行きたい場所がある」と真夜が車を走らせる。
「どこに行くの?」
「美味しい食事のあるところ」
それだけしか教えてもらえないまま、真夜が運転する車は途中で渋滞にはまりながらも目的地へと進んでいく。
その景色が少しずつ懐かしい街並へと変わっていったところで、ようやく私は気が付いた。
「よし。到着だ」
そう言って、真夜が車をとめた場所は私の実家である和食料理屋【保しな】の前だった。
そこで私を車から降ろすと、真夜は近くのコインパーキングへ車を停めに向かった。
取り残された私は、その場にただ立ち尽くして、真夜が戻ってくるのを待つ。
ここへ来たということは、晩ご飯は保しなで食べるのかもしれない。
趣のある木造建ての一軒家。その入口にかかる年季の入った赤い暖簾を見つめる。
『あら、明ちゃんお帰りなさい』
――そんな母の声が聞こえた気がした。
『明ちゃんたら、今日学校に給食袋を持っていくの忘れたでしょ』
『明ちゃん。今日のかけっこはどうだった。頑張って走れた?』
『どうしたの明ちゃん、そんなに浮かない顔して。さてはまた真夜君に振られたんでしょ』