強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
『おっ、このクッキーうまそう』

明の言葉を聞き流すと、俺はテーブルの上に用意されたお菓子へと手を伸ばす。

『ねぇ、真夜。私の話、聞いてる?』

『ほら、明も食べてみな。このクッキーうまいから。ベルギー王室御用達らしいぞ』

『えっ、ベルギー王室……ひとつちょうだい』

『はい、どーぞ』

明にクッキーを手渡すと、彼女がそれを口の中へ入れた。

『あっ、本当だ。おいしい』

『だろ。ほら、もう一個』

『ありがとう』

さっきまで強い口調で俺を問い詰めていたはずなのに、単純な明の気持ちはすっかりクッキーへと向かった。


あの日、挙式が始まる前に俺は明からひとつだけお願いをされた。

それは、誓いのキスの場所を唇ではなくて頬にしてほしいということ。

理由は、ただ単に俺と人前でキスをするのが恥ずかしいからという明らしいものだった。


でも、式が始まり誓いのキスになると、俺はその約束を破って、明の唇に自分の唇を重ねた。


そうすることで、あの日、俺は誓ったんだ。


明を永遠に愛する、と――


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