強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
「忘れないでちゃんと覚えておかないと。いつか晴斗君が私を迎えにくるかもしれないから」

「明が覚えていても、晴斗君は忘れてるかもな。きっと明よりも美人な女の子に出会って、その子に恋に落ちてるよ」

「なにその言い方」

ひっどーい、と明は怒ったように呟いて、お皿の上のフレンチトーストをパクパクと口に頬張る。そんな彼女を俺はただ静かに見つめていた。


何気なく明の口から‟約束„という言葉が飛び出たせいかもしれない。


ふとあの日のことを思い出してしまう。


『……ずっと待ってる。だから約束だよ、真夜。絶対に私のこと迎えにきてね』


――七年前。

バリへと発つ空港で、俺を見送りに来た明と交わした大切な約束。


母親を亡くしたときの記憶と一緒に、その約束のことも明は忘れてしまっているけれど、俺はどうしても明との約束を守りたかった。


そのために俺はたぶんずるい手を使って明と結婚をした。


本当にこれで良かったのか。


今でもふと考えてしまう――

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