強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
『真夜君、いつもありがとう。明をここまで連れて来てくれて」
――あの頃、小学生だった明はまだ一人で電車を乗り継いで、潔子さんが入院している病院まで行くことができなかった。
だから、お店の仕事で忙しい久志さんの代わりによく俺が病院まで付き添ってあげていた。
けれど、明が中学生になると一人で潔子さんのお見舞いへ行けるようになり、俺が付き添うこともなくなった。
潔子さんが亡くなったのは俺がバリへと発ったわずか三日後のことだった。
その訃報を親父から受けた俺は、すぐにでも日本へ帰国したかった。でも、そのときの俺はバリのホテルの支配人就任を翌日に控えた状態で、すぐに日本へ帰国することができなかった。
明のことが心配でメッセージを送ったけれど返信はなくて、電話も留守電に切り替わり、折り返しかかってくることはなかった。
そこから明との連絡は途絶えてしまった。
彼女のことを気にかけながらも、支配人としての仕事に日々追われていてた俺は、バリにいる三年間、明とは一度も連絡を取り合うことができなかった。
今思えば何とかして時間を作って、一度は日本へ帰国していればよかったと後悔している。
明のそばに寄り添ってあげたかった。