強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
「おおっ、真夜君」
勢いよくリビングの扉が開き、それに驚いた俺は思わずビクッと肩が跳ねた。
振り向くと、お店の仕事を終えた久志さんが割烹着姿のままリビングへと入ってくる。
「もうこんな時間だかお茶でも一杯飲んで行かないか」
「はい。いただきます」
仏壇から離れて、ダイニングテーブルのイスに座ると、いれたてのお茶が入った湯飲みを二つ、久志さんがテーブルの上に置いた。さっそくひと口喉へ流し込む。
「そういえば真夜君。泰三さんの体調はどうだ? 風邪をこじらせて入院していると聞いていたけど」
久志さんが心配した様子で親父の体調を尋ねてきた。俺は湯飲みをテーブルに置いてから答える。
「無事に退院できて今は元気です。仕事にも復帰しました」
「そうか。それはよかった」
「でも、今回のことで自分の体力の限界を感じたみたいで。来年には社長を退くと言っています」
「ということは、いよいよ真夜君がシヅキホテルグループの新しい社長になるのか」
「そうですね」
頷いてから、全く冷めない熱いお茶をゆっくりとすすった。