強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
昨年の九月、Viola Luna のロビーで偶然、明を見掛けた。

久しぶりに姿を見たけれど、すぐに明だと気が付いた。

華やかなパーティードレス姿の明は、どうやら知り合いの結婚式に参列するために Viola Luna に来ていたらしい。

友人を祝福する彼女の横顔は笑っていたけれど、それは俺が知っている明の笑顔じゃなかった。

作りもののようにどこか冷めた笑顔。

明はもっと、その名前の通り人を明るく照らすように笑う子なのに。


明は今、幸せに暮らせているのだろうか……。


『約束だよ。真夜が日本に戻ってきたら、私を真夜のお嫁さんにしてね』

『ああ、約束だ』


そのとき、バリへと発つ空港で明と交わした約束のことを思い出した。

明は忘れてしまっているけれど、どうしても俺はあの日の約束を守りたいと思ってしまった。

同じ頃、明の実家の和食料理屋【保しな】が経営難であることを知った。それを利用して俺は、明の父親である久志さんに提案をした。


‟保しなの経営難を救う代わりに明と結婚をさせてほしい„


明と空港で交わした約束のことも打ち明けて、久志さんに頭を下げた。もちろん、親父にも事情を話して説得した。


そして俺は明と結婚をした。


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