強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
――今から七か月前。
夏の暑さからようやく解放され、季節は秋へと変わりつつある十月初旬のことだった。
ワンルームの小さなマンションで独り暮らしをしていた社会人二年目の私の元に、突然、父から電話が掛かってきた。
時刻は深夜一時過ぎ。
ぐっすりと眠っていたのに、突然の電話に叩き起こされた私は、まだ半分夢の中にいた。
眠たい目をこすりながら父の話に耳を傾けるけれど、内容が全く頭に入ってこない。
「……うん……うん。……はいはい、わかったよ」
適当に相づちを打ちながら父の話にぼんやりと耳を傾けること数分。
「――と、まぁ、そういうことだから。とにかく今週の土曜に実家へ戻ってきなさい。いいね」
「はーい」
父は自分の用件だけを伝え終わると電話を切った。
寝惚けながら聞いていたせいで、私は父の話を少しも理解していなかった。けれど、とりあえず土曜に実家へ帰るよう言われたことだけは理解できた。
詳しい話はそのときまた聞けばいいか……。
のんきにそんなことを思った私は、父の電話の内容についてあまり深く考えることなく、再び眠りについた。