強引な政略結婚が甘い理由～御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない～
私は、慌てて首を横に振った。

「大丈夫だよ。前より気にしてないから。それに、私もこのチラシの東雲優愛さんのことキレイだと思うもん。今朝、駅前で見たときキュンときた。この赤いリップもすごく似合っていてすてきだし」

「ですよね！ ですよね！」

千華ちゃんに笑顔が戻った。

彼女に合わせるように私も口角を上げて頬笑むけれど、胸の中のモヤモヤとした気持ちと、漠然とした不安は消えない。


ふと窓に目を向けると、いつの間にかザーッと激しく雨が降っていた。

音は聞こえてこないけれど、窓ガラスを打ち付ける雨粒でその激しい降り方が伝わってくる。


私は、子供の頃から雨の日が好きじゃない。

雨の日はいいことが起きないと決まっているから。


一時退院していた母が、病院へ戻ってしまう日はなぜかいつも雨が降っていた。

それに、初めて真夜が彼女と手を繋いで歩いているところを見た日も、抱き合っている姿を見た日も、キスをしているところを見た日も、雨上りのどんよりとした空の下だった。


お母さんが亡くなった日も雨が降っていたのだろうか……。


当時のことをどうしても思い出せない私には分からないけれど、雨の日はいいことが起きないという私のこれまでの経験上、きっとその日は近年まれに見る大荒れの天気だったと思う。

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