強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~



「――ちゃん。明ちゃーん!」

隣から大きな声で名前を呼ばれてハッと気が付く。

どうやら意識がどこかへ飛んでいたらしい。

振り向くと、ケチャップで口の回りを真っ赤にした晴斗君が、志穂さんの手作りのオムライスを頬張っていた。

昨日の土砂降り雨が嘘のように、今日は雲ひとつなくすっきりと晴れている。

約束通り、今日の午前中は晴斗君と公園に遊びに行った。

遊具や砂場は少し湿っていたけれど、ボールを蹴ったり、鬼ごっこやかくれんぼをしたりして二時間ほどたっぷりと遊んだ。

そのあとは晴斗君のおうちで志穂さんの手作りオムライスをご馳走になり、午後は近くのショッピングセンターのヒーローショーへ一緒に行くことになっている。

「明ちゃん。ママの作ったオムライス食べないの? 早く食べないと腐っちゃうよ」

「えっ。ああ、うん。そうだね。今から食べるから大丈夫だよ」

腐っちゃう、という表現がおもしろくてクスッと笑ってしまった。

「明ちゃん。オムライス食べたらヒーローショー行こうね」

「うん、行こうね」

「よし! 僕、今からすごーく早く食べるから見ててね」

そう言って、晴斗君はスプーンで次から次へとオムライスを口に運んでいく。飲みこめないのか、頬がパンパンだ。

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